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法人成り後の税務調査【令和8年・2026年】|個人と会社のどちらに来るか、何年分さかのぼるか、見られる7つのところ

法人成り後の税務調査|プロゴ早見帳

法人成りした後も、個人の確定申告(最後の年分を含む)と、会社の申告は、それぞれ税務調査の対象です。税務署が申告を直せる期間は、法定申告期限から原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年で、会社の欠損金を増減させる更正は10年です(国税通則法70条)。会社の調査では、個人から会社へ移した資産や、廃業日の前後の売上・経費など、個人と会社のつなぎ目も確認されることがあります。

先に要点をお伝えします。国税通則法が定めているのは、調査の手続と、さかのぼれる期間です。国税庁は、調査の必要度が高い法人に実地調査を行うと公表しており、令和6事務年度の法人税の実地調査は5万4千件、申告件数322万件のおよそ60分の1です。個人と会社のつなぎ目にあたるのは、売上と経費の切れ目、資産を移した価額、廃業した年の経費、個人名義の契約と家事按分、役員貸付金、役員報酬と源泉所得税、消費税の7つです。調査で会社の申告を直すと、個人の申告にも影響することがあり、払いすぎた側は更正の請求で取り戻します。本記事では、2026年10月8日時点の法令と国税庁の公表資料にもとづいて、調査の対象・さかのぼる期間・7つの確認点・連絡が来たときの準備・指摘を受けた後の手続を解説します。

▶ 法人にするかどうかの判断と、設立の前後に決めることの全体は法人成りの目安と手順で、個人から会社へ資産を移すときの価額の決め方は法人成りの資産・負債の引き継ぎで解説しています。

この記事でわかること

  • 調査の対象——個人の申告と会社の申告、個人の事業と会社が結びつく届出書
  • 何年分さかのぼるか——原則5年・不正があれば7年・会社の欠損金は10年と、帳簿の保存期間
  • つなぎ目の7つ——売上と経費の切れ目、資産の価額、廃業した年の経費、名義と按分、役員貸付金、役員報酬、消費税
  • 連絡が来たら——事前通知で知らされることと、そろえる書類
  • 指摘を受けたら——加算税と、個人・会社の両方の直し方

この記事とあわせて使う記事・ツール

記事・ツール 確かめられること 読む章
法人成りの目安と手順 法人にするかの判断と、設立の前後に決めることの順番 対象
法人成りの資産・負債の引き継ぎ 資産を移す価額の決め方、譲渡契約書と仕訳の例 7つのところ
法人成りした年の確定申告と廃業手続き 廃業した年の事業所得の締め方と、個人事業税の見込控除 7つのところ
法人成りと消費税・インボイス 会社の免税の判定、登録番号の切り替え、2割特例 7つのところ
役員報酬の決め方 定期同額給与と、設立から3か月以内の決め方 7つのところ
個人事業主の税務調査 税務調査の流れと、当日に聞かれること 連絡が来たら
税務調査対応 事前通知の後の申告の見直しと、調査の立会い 連絡が来たら

Scope

目次

法人成りの後は、個人の申告と会社の申告がそれぞれ調査の対象になる

個人事業主と、その人が設立した会社は、税金の上では別の納税者です。法人成りした年の前後には、次の申告がそれぞれ出ています。

納税者 税目 対象になる期間
個人 所得税 廃業した年までの各年分。廃業した年は、廃業日までの事業所得と会社の役員報酬などをまとめた1年分
個人 消費税(課税事業者の場合) 廃業した年までの各年分。会社に売った在庫・車なども課税売上
会社 法人税・地方法人税 設立の日から始まる各事業年度
会社 消費税(課税事業者の場合) 各課税期間
会社 源泉所得税 役員報酬・給与・報酬を払った各月

実地の調査の前には、原則として、調査の開始日時・場所・目的・税目・期間・対象となる帳簿書類などが、調査を受ける納税者(個人または会社)に通知されます(国税通則法74条の9第1項)。

届出書で、個人の事業と会社が結びつく

個人の開業・廃業等届出書には「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」の欄があり、設立した会社の名称・納税地・設立登記の日を書きます。会社の法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)には「設立の形態」の欄があり、「個人企業を法人組織とした法人である場合」を選ぶと、個人企業のときの納税地が代表者の住所と同じかどうかも書きます。この2つの届出書で、個人の事業と会社が結びつきます。

何年目に調査が来るか

国税通則法が定めているのは、調査の手続(事前通知など)と、さかのぼれる期間です。国税庁は、調査の必要度が高い法人には実地調査を行い、申告内容に簡易な誤りが想定される法人には、書面照会・電話連絡・来署依頼による面接で申告書の自発的な見直しを求める「簡易な接触」を行っていると公表しています。

項目 令和6事務年度
法人税の実地調査 5万4千件
 うち非違があった件数 4万2千件
 うち不正計算があった件数(不正発見割合) 1万3千件(23.5%)
法人税・消費税の簡易な接触 8万5千件
参考:法人税の申告件数(令和6年度) 322万件

実地調査の件数は、申告件数のおよそ60分の1(約1.7%)にあたります。調査の件数は令和6年7月から令和7年6月までに処理を終えた調査、申告件数は令和6年度の申告の集計で、範囲が違う件数どうしの比です。

Period

何年分さかのぼるか——原則5年、不正があれば7年、会社の欠損金は10年

税務署が申告を直す更正は、法定申告期限から5年を過ぎるとできなくなります(国税通則法70条1項)。偽りその他不正の行為で税を免れた場合は7年(同条5項)、会社の欠損金(法人税の純損失等の金額)を増やしたり減らしたりする更正は10年(同条2項)です。6月30日に廃業し、7月1日に6月決算の会社を設立した例で見ると、次のとおりです。

税務署が申告を直せる期間(6月30日に廃業し、7月1日に6月決算の会社を設立した例)法人成り2026年7月個人の所得税令和8年分令和9年3月15日令和14年3月15日令和16年3月15日会社の法人税1期目(令和9年6月期)令和9年8月31日令和14年8月31日令和16年8月31日令和19年8月31日2026令和82028令和102030令和122032令和142034令和162036令和182038令和20原則(5年)偽りその他不正の行為があれば(7年)会社の欠損金の更正(10年)

個人の最後の申告と会社の1期目は、期限がずれて並びます。会社の欠損金の更正は10年まで続きます

申告 法定申告期限 原則(5年) 不正があれば(7年)
個人の所得税(令和8年分) 令和9年3月15日 令和14年3月15日 令和16年3月15日
個人の消費税(令和8年分) 令和9年3月31日 令和14年3月31日 令和16年3月31日
会社の法人税(1期目・令和9年6月期) 令和9年8月31日 令和14年8月31日(欠損金は令和19年8月31日) 令和16年8月31日
会社の消費税(同じ期間) 令和9年8月31日 令和14年8月31日 令和16年8月31日

日付は、更正ができる最後の日です。会社の欄は、申告期限の延長を受けていない場合です。申告の義務がない人が還付を受けるために出す申告書(還付請求申告書)は、提出した日から数えます(国税通則法70条1項1号)。

5年・7年は、申告を直せる期間です。調査する年分の減価償却費を確かめるために、資産を取得した年の帳簿書類を求められるなど、それより前の書類を見せることもあります(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問9)。個人から引き継いだ資産の取得価額は、引継ぎのときの譲渡契約書が根拠になります。

源泉所得税の徴収権は、原則として法定納期限から5年で時効により消滅し、偽りその他不正の行為があるときは、最初の2年間は時効が進みません。納税の告知や督促などがあると、時効の完成が猶予・更新されます(国税通則法72条1項・73条1項・3項)。

帳簿書類は、廃業した後も保存期間の間は残す

青色申告をしていた個人の帳簿と決算関係の書類は、その年の翌年3月15日の翌日から7年保存します(所得税法施行規則63条。現金・預金の取引に関係しない一部の書類は5年)。令和8年6月に廃業した場合、令和8年分の帳簿は令和16年3月15日まで保存します。会社の帳簿書類は、事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日から7年、欠損金が生じた事業年度の分は10年保存します(法人税法施行規則59条1項・2項・26条の3)。株式会社・合同会社などは、会社法でも、会計帳簿と事業に関する重要な資料を、帳簿の閉鎖の時から10年保存します(会社法432条2項・615条2項)。

詳しく見る:帳簿を見せられないときの加算税

調査で売上に関する帳簿の提示・提出を求められたのに出さなかったり、帳簿に書いた売上の金額が本来書くべき金額の2分の1に満たなかったりすると、その帳簿に関係する申告漏れの税額について、過少申告加算税・無申告加算税の割合に10%が上乗せされます。2分の1以上3分の2未満なら5%の上乗せです(国税通則法65条4項・66条5項、同法施行規則11条の2)。災害などで納税者の責めに帰すべき事由がない場合は除かれます。調査の対象の年分なら、廃業した年の個人の帳簿も同じです。

7 Points

個人と会社のつなぎ目で論点になる7つのところ

法人成りした会社の調査では、会社の帳簿に加えて、会社の取引とつながる範囲で個人の記録も確認されることがあります。法人税の調査では、会社に対して金銭の支払や物品の譲渡をする義務がある人や、会社から金銭の支払や物品の譲渡を受ける権利がある人にも、質問や帳簿書類の提出を求めることができ(国税通則法74条の2第1項2号ロ)、役員報酬を受け取る社長や、会社に売った資産の代金をまだ受け取っていない社長はこれに当たります。個人の申告そのものも、所得税の調査の対象です(同項1号イ)。

個人と会社のつなぎ目で論点になる7つのところ個人廃業日まで決算書・確定申告書帳簿・通帳開業・廃業等届出書会社設立日から開始時の貸借対照表帳簿・通帳・議事録法人設立届出書① 売上と経費の切れ目(廃業日の前後)② 資産を移した価額(時価との差)③ 廃業した年の経費の締め方④ 個人名義の契約と家事按分⑤ 役員貸付金・役員借入金⑥ 役員報酬と源泉所得税⑦ 消費税の判定と登録番号

個人の側と会社の側の書類を並べて、日付と金額がつながっているかが確かめられます

1. 売上と経費の切れ目——廃業日の前と後

廃業日までに引き渡しや役務の提供を終えた仕事の売上は個人の事業所得、その後に会社が行った仕事の売上は会社の益金です(所得税基本通達36-8)。入金が会社の口座でも、廃業日までに終えた仕事なら個人の売上です。請求書の名義、入金口座、引き渡し・完了の日がそろっているか、個人と会社の両方に入っている売上や、どちらにも入っていない売上がないかが確かめられます。廃業日をまたぐ月の家賃・通信費・カードの引落しも、どちらの経費かを日付で分けます。

2. 資産を移した価額——時価との差

在庫を通常の販売価額のおおむね7割未満で会社に売ると、時価との差額のうち実質的に贈与したと認められる額が、個人の事業所得の収入に加わります(所得税法40条1項2号、所得税基本通達40-2・40-3)。車や機械などは、時価の2分の1未満で会社に売ると、時価で売ったものとみなされます(所得税法59条1項2号、同法施行令169条)。会社の側では、時価より安く受け入れた差額が受贈益になり(法人税法22条2項)、時価より高く買えば、時価を超える部分が社長への給与と扱われることがあります(同法34条4項、法人税基本通達9-2-9(3))。

▶ 資産ごとの時価の決め方、譲渡契約書に書くこと、個人と会社の仕訳の例は法人成りの資産・負債の引き継ぎで解説しています。

3. 廃業した年の経費の締め方

廃業した年の所得に課される個人事業税は、その課税見込額を廃業した年の必要経費に入れられます(所得税基本通達37-7)。見込控除をしなかった場合は、課税された後に、廃業した年の必要経費に入れて更正の請求をします。廃業した後に生じた、廃止した事業に係るほかの費用や損失も同じで、廃業した年(その年の所得から引ききれない分は前年)の必要経費になり、更正の請求は事実が生じた日の翌日から2か月以内です(所得税法63条・152条、同法施行令179条)。そのうえで、会社に引き継いだ後の費用が個人の経費に入っていないか、会社の経費と重なっていないかが確かめられます。

▶ 廃業日での帳簿の締め方と、個人事業税の申告・見込控除は法人成りした年の確定申告と廃業手続きで解説しています。

4. 個人名義のままの契約と、家事按分

事務所の賃貸借、車のリース、携帯電話などが個人名義のまま会社が払っている場合は、会社の業務に使っていることを、契約・使用の実態・精算の記録で示します。私的に使う部分まで会社が負担すると、その分は社長への給与(経済的な利益)と扱われます(法人税法34条4項、法人税基本通達9-2-9)。個人事業のときの家事按分の割合をそのまま会社に持ち込まず、会社の業務に使う割合を、使用の実態にもとづいて決め直します。社長の住まいを会社が借りる場合は、社宅として社長に貸し、通常の賃貸料の額(所得税基本通達36-40・36-41)を基準に社長から家賃を受け取る方法があります。

▶ 社宅にする場合の家賃の計算は、役員社宅の家賃の決め方で解説しています。

5. 役員貸付金と役員借入金

会社が社長個人の支払を立て替えたままのものや、会社の口座から引き出した生活費は、社長が返す約束の貸付けとして処理するなら役員貸付金です。返す約束も返済の実態もなければ、会社が社長の個人的な費用を負担したものとして、社長への給与と扱われることがあります(法人税法34条4項、法人税基本通達9-2-9(10))。貸付けにする場合、無利息や通常の利率より低い利率だと、通常の利率による利息との差額が社長への給与として課税されることがあります(所得税基本通達36-49、国税庁タックスアンサーNo.2606。差額が年5,000円以下などの例外があります)。会社が役員貸付金を放棄・免除すると、貸倒れに当たる場合を除いて、その額は社長への給与になります(法人税基本通達9-2-9(4))。反対に、社長が会社に出したお金は、資本金として払い込んだ出資と、会社が返す借入金(役員借入金)を分けて記録します。設立の費用を社長が立て替えた分も役員借入金です。いつ・いくら・何のために出したかを、通帳と契約書で示せるようにします。

6. 役員報酬と源泉所得税

役員報酬は、事業年度の開始の日(1期目は設立の日)から3か月以内に決めた額を、毎月同じ額で払うと損金になります(法人税法34条1項1号、同法施行令69条1項1号イ)。期の途中で増やした分は、職制上の地位の変更などの臨時改定事由に当たる場合を除いて、損金に算入されません(同法施行令69条1項1号ロ)。家族を役員にした場合は、職務の内容や、同じ種類・規模の会社の支給状況などに照らして相当かどうかが見られます(法人税法34条2項、同法施行令70条1号)。役員報酬からは源泉徴収をして納めます(所得税法183条)。給与を受ける人が常時10人未満なら、承認を受けて年2回にまとめて納める納期の特例があり(同法216条)、承認を受けるまでは毎月納めます。

▶ 役員報酬の金額の決め方と、決めた額を記録する議事録は役員報酬の決め方で解説しています。

7. 消費税の判定と登録番号

会社の消費税の納税義務は、会社の基準期間・特定期間の課税売上高と、設立時の資本金などで判定します。資本金1,000万円以上で設立した会社は1期目から課税事業者です(消費税法12条の2)。原則として1期目の最初の6か月(特定期間)の課税売上高と給与の額がともに1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります(同法9条の2)。インボイスの登録番号は個人と会社で別なので、会社は会社で登録を受けます。2割特例は、法人は令和8年9月30日を含む課税期間までです。個人の側では、会社に売った在庫・車などが廃業した年の課税売上になり、私的に使うために残した在庫は家事消費として売上に入れます(同法4条5項1号)。

▶ 会社の免税の判定と、登録番号の切り替え、2割特例の扱いは法人成りと消費税・インボイスで解説しています。

元国税調査官の視点

法人成りした会社の調査では、資産の引き継ぎや消費税の判定など、法人成りに共通する論点が確認されます。どれも、個人の最後の決算書・確定申告書と、会社の開始時の帳簿・契約書を並べると、日付と金額のつながりが確かめられるところです。廃業日、譲渡契約書の日付と代金、個人と会社の通帳の入出金をそろえておけば、問われたときにその書類で説明できます。

Prepare

連絡が来たら——会社と個人の書類をそろえる

実地の調査の前には、原則として事前通知があり、調査の開始日時・場所・目的・税目・期間・対象となる帳簿書類などが知らされます(国税通則法74条の9第1項)。税務代理をする税理士がいれば、税理士にも通知されます。通知された期間の会社の帳簿に加えて、法人成りした会社では次の書類をそろえておくと、つなぎ目の質問に書類で答えられます。

書類 主に確かめられること
会社の開始時の貸借対照表と、資産の引継ぎ一覧表・譲渡契約書 何を・いつ・いくらで個人から会社へ移したか
個人の最後の決算書・確定申告書・帳簿 廃業日までの売上と経費、会社に売った資産の譲渡所得
開業・廃業等届出書と法人設立届出書の控え 廃業日と設立日
役員報酬を決めた株主総会・取締役会の議事録 定期同額、金額を決めた時期
社宅・出張旅費の規程、賃貸借契約書・リース契約書 会社が負担した費用の根拠
社長と会社の金銭消費貸借契約書、個人と会社の通帳 役員貸付金・役員借入金と、お金の流れ
消費税の届出書(インボイスの登録・簡易課税・課税事業者の選択) 免税・課税の判定と、申告の方法
当事務所の目安

法人成りの年は、個人の最後の貸借対照表と会社の開始時の貸借対照表を、資産ごとの引継ぎ一覧表でつないでいます。在庫・車・売掛金・借入金について、移した日・価額・その根拠を1枚にまとめ、譲渡契約書と一緒に、会社の事業に関する重要な資料として10年保存します。

▶ 調査の流れと、当日に聞かれることへの答え方は個人事業主の税務調査で、雑談やデータの確認のされ方は税務調査では、領収書のほかに何が確認されるかで解説しています。

After

指摘を受けたら——加算税と、個人・会社の両方の直し方

調査の結果、更正すべき点があると、調査官からその内容と理由の説明があります(国税通則法74条の11第2項)。修正申告を勧められるときは、修正申告を出すと不服申立てはできないが更正の請求はできることの説明があり、その旨を書いた書面が交付されます(同条3項)。直す点がなければ、その旨が書面で通知されます(同条1項)。

修正申告・更正の場面 過少申告加算税
調査通知の前に、自主的に修正申告 なし(国税通則法65条6項)
調査通知の後、更正を予知する前に修正申告 5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)
調査で指摘を受けて修正申告、または更正 10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)(同条1項・2項)
隠蔽・仮装があった場合 過少申告加算税に代えて重加算税35%(同法68条1項)

表は、期限内に申告した後の過少申告の場合です。無申告の場合や、重加算税を繰り返し課される場合などは別の割合です。このほかに延滞税も納めます(国税通則法60条)。帳簿を提示しなかった場合などの上乗せ(同法65条4項)も、上の表とは別です。

会社を直すと、個人の申告にも影響する

法人成りした会社の調査では、個人と会社の間で、売上や経費の帰属が動くことがあります。たとえば、廃業日の後に会社が行った仕事の売上を個人の売上に入れていた場合、会社の側で修正申告や更正があり、個人の側は払いすぎた所得税を更正の請求で取り戻します。更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。会社に税務署の更正・決定があったときは、その翌日から2か月以内なら、5年を過ぎていても請求できる特例があります(同条2項2号)。この特例のきっかけは会社への更正・決定なので、会社が自分で修正申告をした場合は、5年以内に請求します。会社の法人税が増える修正申告や更正があったら、法人事業税・法人住民税も修正申告をします(地方税法72条の31第2項・3項、53条34項・35項、321条の8第34項・35項)。個人の住民税と事業税は、所得税の修正申告や更正の内容にあわせて直されます。

当事務所の目安

申告の誤りに気づいたら、調査通知の前に修正申告をおすすめしています。調査通知の前に自主的に出した修正申告は、過少申告加算税の対象外です(延滞税は納めます)。

FAQ

よくある質問

法人成りしたら、個人時代の税務調査はもう来ませんか?
個人で最後に出した確定申告も、法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為があれば7年)は調査の対象です。令和8年6月に廃業した場合、令和8年分の確定申告の法定申告期限は令和9年3月15日なので、原則として令和14年3月15日まで更正できる期間が続きます(国税通則法70条)。会社の調査で、個人から会社へ移した資産や、廃業日の前後の売上を確認されることもあります。
法人成りして何年目に税務調査が来ますか?
国税通則法が定めているのは、調査の手続と、さかのぼれる期間(原則5年)です。国税庁は、調査の必要度が高い法人に実地調査を行い、申告内容に簡易な誤りが想定される法人には書面照会などの簡易な接触を行うと公表しています。令和6事務年度の法人税の実地調査は5万4千件で、申告件数322万件のおよそ60分の1です(集計の範囲が違う件数どうしの比です。国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」)。
会社の税務調査で、個人時代の通帳や帳簿を見せるよう言われることはありますか?
会社の取引とつながる範囲で、求められることがあります。法人税の調査では、会社から金銭の支払を受ける権利がある人などにも、質問や帳簿書類の提出を求めることができ(国税通則法74条の2第1項2号ロ)、役員報酬を受け取る社長はこれに当たります。個人の申告そのものも、法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為があれば7年)の間は所得税の調査の対象です(同項1号イ、70条)。個人の帳簿書類は、保存期間(青色申告なら7年)の間、残しておきます。
赤字の会社にも税務調査は来ますか?
来ることがあります。会社の欠損金は翌期以後の所得から差し引けるので、欠損金の額を増減させる更正は、法定申告期限から10年までできます(国税通則法70条2項)。欠損金が生じた事業年度の帳簿書類は、10年保存します(法人税法施行規則26条の3)。
個人事業の帳簿は、廃業した後いつまで残せばよいですか?
青色申告をしていた方の帳簿と決算関係の書類は、その年の翌年3月15日の翌日から7年保存します(所得税法施行規則63条。一部の書類は5年)。令和8年6月に廃業した場合、令和8年分の帳簿は令和16年3月15日まで保存します。
税務署から、申告内容を確認する文書や電話が来ました。税務調査ですか?
税務署からの文書や電話には、税務調査の場合と、申告内容の自発的な見直しを求める行政指導の場合があり、どちらに当たるかは税務署から明示されます(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2)。国税庁は、申告内容に簡易な誤りが想定される法人に、書面照会・電話連絡・来署依頼による面接で自発的な見直しを求める「簡易な接触」を行っています(令和6事務年度は法人税・消費税で8万5千件)。行政指導に応じて修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません(延滞税は納めます)。調査として連絡を受けた後の修正申告は、過少申告加算税の対象です。
法人成りの1期目に消費税の還付申告をすると、税務調査が来やすいですか?
国税庁は、消費税の還付申告法人を重点課題の1つとして公表しており、令和6事務年度は消費税還付申告法人に4,802件の実地調査を行っています。1期目に設備投資などで還付になる場合は、課税事業者を選択した届出書と、仕入れの請求書(インボイス)・契約書・支払の記録をそろえておきます。

出典・参考(2026年10月8日確認)

  • 国税通則法23条1項・2項2号(更正の請求)・60条(延滞税)・65条1項・2項・4項・6項(過少申告加算税)・66条5項(無申告加算税)・68条1項(重加算税)・70条1項・2項・5項(更正決定等の期間制限)・72条1項・73条1項・3項(徴収権の消滅時効)・74条の2第1項1号・2号(質問検査権)・74条の9第1項(事前通知)・74条の11(調査の終了の際の手続)、国税通則法施行規則11条の2(加重の対象となる帳簿)
  • 所得税法40条1項2号(棚卸資産の低額譲渡)・59条1項2号(法人に対する低額譲渡)・63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)・152条(更正の請求の特例)・183条(源泉徴収義務)・216条(納期の特例)、所得税法施行令169条・179条、所得税法施行規則63条(帳簿書類の保存)
  • 法人税法22条2項・34条1項1号・2項・4項(役員給与)、法人税法施行令69条1項1号イ・ロ(定期同額給与)・70条1号(過大な役員給与)、法人税法施行規則26条の3・59条1項・2項(帳簿書類の保存)、会社法432条2項・615条2項(会計帳簿の保存)
  • 消費税法4条5項1号・9条の2・12条の2、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2(2割特例)、地方税法53条34項・35項・72条の31第2項・3項・321条の8第34項・35項
  • 所得税基本通達36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)/同36-40・36-41・36-49(役員社宅の賃貸料・利息相当額の評価)/同37-7(事業税の見込控除)/同40-2・40-3(棚卸資産の低額譲渡)、法人税基本通達9-2-9(3)(4)(10)(債務の免除による利益その他の経済的な利益)、タックスアンサーNo.2606 金銭を貸し付けたとき
  • 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月)・「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」(令和7年10月)、内国普通法人等の設立の届出(法人設立届出書の様式・記載要領)、個人事業の開業・廃業等届出手続、税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)(問2・問9)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。調査の件数は国税庁の公表資料(令和6事務年度)によります。

執筆:好川 寛(税理士・元国税調査官/東京国税局15年・調査・審理・国税不服審判所、IT企業でのプロダクトマネジメント経験)

法人成りの後の税務調査は、個人の最後の申告と会社の1期目の書類をそろえるところから始まります。事前通知が来た段階でも、申告の見直しと調査の立会いをご相談いただけます。

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プロゴ税理士事務所 代表税理士。東京国税局・東京国税不服審判所で15年、税務調査・審理に従事。非居住者課税の相談実務に精通する。大手YouTuberエージェンシーでの実務経験から、フリーランス・インフルエンサー特有の税務にも明るい。その後、IT企業でのプロダクトマネジメントを経て神奈川県川崎市で独立。税務メディアの記事監修も多数手がける。

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