TAX CONTENT SUPERVISION
正しいだけでは、読まれない。読まれるだけでは、誤る。
「税理士 記事 監修」と検索してたどり着いた、メディア運営者・編集者の方に向けたページです。監修者を探している段階では、誰に頼んでも同じに見えると思います。監修者が原稿に対して実際に何をしているのかが、発注側からは見えないためです。ここでは、私が何を確認し、どこに手を入れ、どこには入れないのかを書きます。
- freee監修記事 現在180本超
- マネイズム 毎月6件監修
- AI下書き原稿に対応
- プロダクト監修に対応
TRACK RECORD
現在監修している媒体
クラウド会計 freee とマネイズムの税務・会計記事を、いずれも継続して監修しています。
freee ─ 現在公開中180本超
freee で現在公開されている監修記事は180本を超えます。継続して監修中です。
マネイズム ─ 毎月6件程度
税務・会計の専門メディアで、毎月6件程度を継続して監修しています。
テーマは幅広く
確定申告とインボイスが中心で、ほかに仕訳・帳簿・決算書などの会計実務、青色申告・白色申告、開業・起業、副業まで扱っています。
BACKGROUND
税務・開発・編集。3つの現場を内側から見ています
私の経歴は3つに分かれます。
国税に15年。税の法律家として
税の文書はステークホルダーが多く、立場によって解釈が割れないことが最優先されます。だから事実と評価を分け、評価語をできるだけ排し、誰が読んでも同じ範囲を指す表現を選ぶ。それが良い文書とされる世界にいました。
freee で所得税領域のPdM
税務の判断をシステムの仕様に落とす側です。ここでの正しさは、抽象化されていること、入力に対して出力が安定していることでした。
その隣にマーケティングの現場
社内で税理士は私だけだったため、対外的に出る税務表現の判断を求められる場面が続きました。ここでの正しさは、読まれること、最後まで運ばれることです。
この3つは、税務という同じ対象を扱いながら、「良い文章」「良い設計」の定義が食い違っています。監修の現場で起きる摩擦のほとんどは、税務の正誤ではなく、この定義の違いから生まれます。書き手が間違っているのではなく、書き手の職能が要求する正しさと、税務が要求する正しさが別物なのです。
税理士は税の専門家ですから、当然その読み方をします。私も基本はそちらです。ただ、編集の現場とシステムの現場がなぜそう書くのかも、内側から見てきました。その翻訳ができることが、私の監修の中身です。
FACT CHECK
まず確認しているのは、事実が現時点で正しいかどうか
表現の話に入る前に、監修の土台になる作業があります。書かれている内容が、いま現在の税法に照らして正しいかどうかの確認です。監修を依頼される方が一番期待されるのもここだと思いますので、実際に何を見ているかを書きます。
改正が反映されているか
税法は毎年改正されます。税率、控除額、適用要件、特例の期限。記載が改正前のままになっていないか、逆に、改正内容がまだ適用開始前なのに現行の取扱いとして書かれていないかを見ます。過去記事のリライトでは、本文だけ直して数値や要件が古いまま残るケースが起きやすい箇所です。
ただし書と例外を踏まえているか
条文には、ただし書・除外規定・特例が数多く付いています。原則だけを書いて例外に触れていない記事は、原則に当てはまらない読者を誤らせます。逆に、限られた場面の特例を一般的な取扱いのように書いてしまうこともあります。どちらも悪意なく起こります。
適用対象を取り違えていないか
個人と法人、居住者と非居住者、青色と白色、給与所得者と事業所得者。制度は対象者ごとに要件が違うため、誰の話なのかを示さないまま書かれた記述は、読者が自分に当てはめた瞬間に誤りになります。
出典と数値が一致しているか
根拠となる条文・通達・タックスアンサーを確認し、記事の記載が元の内容と一致しているかを見ます。改正で差し替わっている出典もあるため、参照先の現況も確認します。
いつ時点の記載かが分かるか
基準日を明示しておくと、改正後に記事が誤りになるまでの猶予が生まれます。改正のたびに全記事を洗う運用は現実的ではないため、ここは費用対効果の高い予防策です。
STRUCTURE
事実が正しくても、事故は起きる
税務記事の誤りは、専門家に確認を取っていない記事だけで起きるわけではありません。確認を取った記事でも起きます。
理由は単純です。専門家が付けた限定句は、たいてい読みにくいからです。「業務との関連性が認められる範囲で」といった一句は、読みやすさを優先すれば真っ先に削られる候補になります。
ただ、税務の判断はその限定句のほうに入っています。削ると、残るのは判断ではなく結論だけになります。
実際にあった事例です。ある記事の原稿には、監修者のコメントが付いていました。趣旨はこうです。飲み会の費用が経費になるかどうかは、業務との関連性で決まる。関連性が認められる範囲でだけ、経費にできる。監修のチェック自体は機能していたのです。ただ、この「業務との関連性」という目に見えない基準は、本文に反映される過程で、一次会か二次会かという誰にでも見える区切りに置き換えられました。読者の「で、自分の場合はどうなのか」に答えるためです。こうして世に出たのが、「一次会の飲み会は経費になるが、二次会はならない」という書き方です。
書き手が間違えたのでも、監修者が見落としたのでもありません。指摘は出ていました。ただ、読者にわかりやすく答えようとする反映の工程で、スペースの関係もあって限定が落ち、判断の基準が別のものにすり替わった。誰も嘘をついていないのに、成果物は誤っている。私が相談を受け、原稿の監修を引き受けるようになったのは、この出来事がきっかけです。
したがって私が監修でやっているのは、間違いを見つけて指摘することよりも、どの言葉が落とせないのか、なぜ落とせないのかを制作側に伝えることです。ここが共有されていれば、次の記事から事故の確率が下がります。共有されなければ、毎回同じ赤を入れることになります。指摘を反映する工程でも同じことが起きるため、反映後の原稿も確認するようにしています。
4 PATTERNS
読みやすさを優先したときに起きやすい4つの誤り
編集者やライターは、分かりやすさ、読みやすさ、キャッチーな言葉で読者を引きつけることに価値を置きます。その価値観自体は正しく、記事にとって必要なものです。ただ、税務を題材にすると、そこから決まった型の誤りが生まれます。私が繰り返し直しているのは、次の4つです。
1. 言い換えによる意味の変質
国税庁の文書は、句読点の位置ひとつで意味が変わることを前提に作られています。表現が硬いのは、わざと難しく書いているのではなく、限定の範囲を確定させるためです。
記事では、これを自分の言葉に置き換える工程がほぼ必ず入ります。読みやすくする意図は正しい。ただ、言い換えた結果、対象範囲が広がっていたり狭まっていたりすることが多い。私は言い換えを止めません。言い換えた後の文が、元の文書と同じ範囲を指しているかだけを見ます。
2. 二分法と断定
経費になるかどうかを、品目・場所・回数といった見えやすい基準の二択に置き換える書き方です。実際に効いているのは業務との関連性なので、同じコーヒー代でも事情が違えば結論が変わります。本来は個別の事情を踏まえた総合判断であるものが、「これはOK、これはNG」という一覧表に変わってしまう。
二択にすれば断定でき、断定すれば読みやすくなります。読者が知りたいのは結論なので、書き手は結論を出したくなる。ただ、本来出せない結論を出すと、その記事は読者に誤った安心を与えるか、不要な不安を与えるかのどちらかになります。
3. 反対解釈
「給与以外の所得が20万円以下なら確定申告は不要」──これ自体は正しい。ところが原稿では、そのすぐ後に「20万円を超えたら申告が必要」と続きます。ここが違います。所得税の申告義務は金額の閾値で決まるのではなく、計算の結果として納付すべき税額が生じるかどうかで決まります。20万円の規定は、本来申告義務のない人に用意された例外であって、申告義務の判定式ではありません。
前の型と似て見えますが、出発点が違います。二分法は、判断の基準そのものを別のものに置き換えてしまう誤り。反対解釈は、正しい文から出発して、そこに書かれていない裏を導いてしまう誤りです。書き手は嘘をついたつもりがなく、一歩余計に進んだだけです。ただ税法には、「AならばB」と定めていても「BならばA」は成り立たない規定が少なくありません。
4. 節税・租税回避・脱税の混同
専門家はこの3語を使い分けますが、原稿では「税金を減らす行為」がひとくくりで脱税と呼ばれることがあります。語感が強く、見出しで目を引くためです。
使い分けの軸は、法との距離です。節税は、法が用意した制度をそのとおりに使って税負担を減らすこと。青色申告特別控除も小規模企業共済も節税です。脱税は、売上を隠す、架空の経費を作るなど、事実を偽って税を免れることで、これは犯罪です。租税回避はその中間にあります。個々の行為は適法でも、法が想定していない形の組み合わせで税負担を減らすもので、課税庁と争いになり得る領域です。つまりこの3つは、程度の差ではなく性質の違いです。
この3つを区別せずに使うと、適法な選択をしている読者を不安にさせるか、逆に違法な手段を軽く見せるかのどちらかになります。どちらに転んでも媒体の信頼を損ないます。
AI CONTENT
AIが書いた原稿も、同じ観点で見ます
このところ、AIで下書きした原稿の監修が増えています。AIの原稿は読みやすい。ただ、読みやすい文章に寄せて生成される以上、上の4つの誤りは人間のライター以上に規則的に現れます。限定句を落とし、歯切れよく断定し、反対解釈をためらいません。
もうひとつ、AI特有の問題があります。学習時点の税制で書いてくることです。改正前の税率や要件が、確信に満ちた文体で混ざってきます。実際、監修の現場で古い法律のまま書かれた原稿は珍しくありません。AI下書きの記事こそ、先に書いた「事実が現時点で正しいか」の確認が効いてきます。
書き手が人間かAIかで、私の見る場所は変わりません。ただ、誤りの出方には型があるので、AI原稿と分かっていれば、その型を重点的に見ます。
POLICY
正確さで押し切る監修者は、記事を殺す
記事は読まれなければ存在しないのと同じです。冒頭で引きを作り、リズムよく言い切り、読者を最後まで運ぶ。これは制作側の技術であり、私にはない技術です。
監修者が法律文書側の価値観だけで押せば、原稿は正確になりますが読まれなくなります。それは媒体にとって失敗です。ですので私は構文に手を入れません。引きの強い書き出しも、断定的なリズムも残します。戻すのは限定句だけです。
実際の赤入れは、たとえばこうなります。
修正前
経費にできるかどうかは、一次会か二次会かで決まります。一次会はOK、二次会はNGです。
修正後
経費にできるかどうかは、一次会か二次会かでは決まりません。分かれ目は、その席が業務と関係していたかどうかです。
短い言い切りも、対比のリズムも、字数もほぼ変わりません。動かしたのは判断の軸だけです。監修で原稿が重くなる、テンポが死ぬ、という懸念はよくいただきますが、限定句を戻す作業と読みやすさは、多くの場合トレードオフになりません。どこを削ると税務判断が壊れ、どこは削っても壊れないか。その線が引けるかどうかの問題です。
PRODUCT
同じことはプロダクトの監修でも起きる
記事だけでなく、税務判定を組み込んだプロダクトの監修も受けています。税額のシミュレーション、経費や控除の判定フロー、AIによる税務の自動回答。このようなプロダクトには、税務の判断がロジックや文言の形で埋め込まれています。
たとえば、居住者・非居住者の判定を滞在日数で自動化する仕様。日数は判断材料のひとつで、実際には生活の本拠がどこにあるかを総合的に見ます。入力が同じなら出力も同じであるべき、という設計思想から見ると、この総合勘案は不安定な処理に映ります。
マーケティングは読者に届けるために判断過程を省き、エンジニアリングは再現性のために判断過程を消す。動機は逆ですが、消えるものは同じです。そして税務では、その判断過程のほうが本体です。
プロダクトの場合、監修の要点は「どこまで自動判定してよいか」「どこから先は個別の確認が必要か」の線引きと、その線を利用者にどう伝えるかの設計になります。仕様書・判定ロジック・注記文言のレビューという形で対応しています。
COVERAGE
対応している領域
- 所得税全般(フリーランス・個人事業主の確定申告、副業、経費)
- IT企業・クリエイター・フリーランスの税務
- 会社設立・法人成り、法人・個人の選択
- 居住者・非居住者の判定、国際的な課税関係
- 相続・資産税
- 税務調査の実務(国税での調査・審理の経験に基づくもの)
ここにないテーマも、まずはお問い合わせください。
REQUEST
ご依頼について
進め方は、媒体や開発チームごとに運用が違います。赤入れの形式、修正理由のコメントの粒度、往復の回数などは、そちらの運用に合わせます。まずは対象となる記事(またはプロダクト)の概要、想定本数、スケジュールをお知らせください。ボリュームと進め方に応じて、監修方法とお見積りをご提案します。
監修だけでなく、執筆からのご依頼にも対応しています。記事末尾に掲載する監修者プロフィール文と写真は、こちらでご用意があります。
なお、原稿を確認しない名義のみの監修はお受けしていません。ここまで書いてきたとおり、監修は名前ではなく工程だと考えているためです。
正しさと読みやすさの間に、線を引きます。
税務の記事は、正しいだけでは読まれません。読まれることだけを優先すれば、税務として誤ります。私が引き受けているのは、その間に線を引く仕事です。お気軽にご相談ください。











