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海外赴任・海外出向の給与と源泉徴収【2026年版】|会社側・本人側の手続きを整理

海外赴任の手続きについてオンラインで相談する女性

従業員や役員が海外に赴任・出向するとき、給与の税務は「会社側(源泉徴収する側)」と「本人側(申告する側)」の両方で取り扱いが変わります。

ポイントは3つです。①出国によって「居住者か非居住者か」が変わる、②非居住者になった後は「どこでの勤務に対する給与か」で日本の課税が決まる、③ただし役員は別ルール、です。

この記事では、元国税調査官の税理士が、出国前・出国後・帰国時のそれぞれについて、会社側と本人側の実務を整理します。

1. まず判定——出国すると「居住者・非居住者」はこう変わる

海外勤務の予定期間がカギになります。

海外勤務の予定期間 出国後の取扱い 日本での課税範囲
1年以上の予定 出国の翌日から原則として非居住者(推定規定) 国内源泉所得のみ
1年未満の予定 居住者のまま 全世界所得(これまでどおり)
当初は1年未満の予定だったが、延長で1年以上に 1年以上となることが明らかになった日以後は、非居住者として取り扱われます その時点以降は国内源泉所得のみ
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単身赴任の場合家族を日本に残す単身赴任でも、1年以上の予定の海外勤務であれば非居住者と判断されることが多いものの、住所(生活の本拠)の有無は最終的に生活実態の総合判断となります。

▶ 居住者判定の考え方(住所の推定・二重居住の調整)は、海外在住者の日本の税金 完全ガイドで詳しく解説しています。

2. 会社側の手続き①——出国までにやること

1

出国時の年末調整

1年以上の予定で出国し非居住者となる従業員には、その年の1月から出国日までに支給した給与について、出国の時までに年末調整を行います。配偶者控除・扶養控除は出国時の現況で判定し(月割りはしません)、生命保険料控除や社会保険料控除は、出国日までに実際に支払った分(給与天引き済みのものを含む)のみが対象です。出国後に引き落とされる予定のものは含められません。

2

住民税の徴収方法の確認

前年分の住民税の残額は、最後の給与からの一括徴収か、本人(または納税管理人)による普通徴収に切り替えます。

3

納税管理人の案内

不動産収入など日本での申告が残る従業員には、出国前の納税管理人の届出を案内しておくと親切です。

▶ 納税管理人の仕組みと届出の手順は、非居住者の確定申告と納税管理人【2026年版】で解説しています。

3. 会社側の手続き②——出国後の給与・賞与の源泉徴収

非居住者になった後は、「どこの勤務に対する給与か」で日本の源泉徴収の要否が決まります。

給与の種類 日本での源泉徴収
出国後の海外勤務に対する給与(一般の従業員) 不要国外源泉所得のため源泉徴収は不要
日本の家族に支払ういわゆる留守宅手当(海外勤務対応分) 通常は不要海外勤務に対応する分は、支払場所が国内でも国外源泉として取り扱われます
出国後に支給する賞与のうち国内勤務期間に対応する部分 必要(20.42%)計算期間で按分する
計算期間の途中で出国した月の給与(計算期間1ヶ月以下) 条件つきで不要勤務の全部が国内勤務ではない場合、全額を国外源泉として源泉徴収不要とする取扱いがあります(所得税基本通達212-5。賞与には使えず按分が必要)
内国法人の役員として受ける報酬 必要(20.42%)海外勤務でも原則として全額が国内源泉所得(支店長など使用人として常時海外で勤務する場合を除く)

※役員の「使用人として常時海外で勤務」の例外(所得税法施行令285条)は要件が厳しく、代表権を有する役員には適用がありません。社長や取締役が海外展開のために赴任する場合でも、原則どおり20.42%の源泉徴収が必要になるケースが大半です。

役員の特例は見落としが非常に多いポイントです。一般の従業員と同じ感覚で「海外勤務だから源泉不要」と処理すると、後日の税務調査で源泉徴収漏れ(不納付加算税・延滞税は会社負担)を指摘されます。なお、相手国との租税条約により取扱いが変わる場合があります。

4. 本人側の税務——出国年・赴任中・帰国年

1

出国年

給与は出国時の年末調整で原則完結します。不動産収入など他の所得がある場合は確定申告が必要で、納税管理人の選任が実務上のカギになります。

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赴任中

一般の従業員については、海外勤務に対応する給与は通常、日本では課税されません(赴任先の税法に従って課税されるのが一般的です)。日本の不動産収入など国内源泉所得がある場合のみ、日本での申告が続きます。なお、国内勤務分の給与で源泉徴収されていないものがある場合は、いわゆる172条申告(翌年3月15日期限)で自分で納付する必要があります。

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住民税

出国後最初の1月1日に日本に住所がなければ、原則その年度の住民税はかかりません。

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帰国年

帰国により日本に住所を有することとなった日以後は、原則として居住者に戻ります。年末調整は帰国後に支給された給与のみが対象です。帰国年に不動産所得などがある場合は、居住者期間と非居住者期間を合わせた確定申告が必要です。

5. 実務でミスが起きやすいポイント(元国税調査官の視点)

出国後に支給する賞与の按分漏れ

賞与の計算期間に国内勤務期間が含まれていれば、その部分は20.42%の源泉徴収が必要です。支給日基準で「もう非居住者だから関係ない」としてしまうミスが定番です。

役員報酬の源泉徴収漏れ

海外子会社に出向しても、内国法人の役員の地位のまま報酬を受けていれば原則全額が国内源泉です。

出国時年末調整の漏れ

「年末にやるもの」という思い込みで、出国時の年末調整を逸する例があります。

海外子会社への寄附金認定リスク(法人税)

親会社と赴任先で給与を分担する場合、日本側が負担する合理的な理由(出向規程に基づく較差補てん金など)がないと「国外関連者への寄附金」と認定され、全額が損金不算入になります。税務調査でも確認されやすい論点です。

社会保険は税と別ルール

健康保険・厚生年金は、在籍出向か転籍かなど赴任形態によって取扱いが異なります。相手国によっては社会保障協定の適用もあり、税の居住者判定とは別に確認が必要です。

6. 当事務所にお任せいただけること

  • 赴任者の出国前税務整理(出国時年末調整・納税管理人・住民税)
  • 会社側の源泉徴収実務の整理(賞与按分・役員報酬・留守宅手当の区分)
  • 赴任中の日本の確定申告(不動産所得など・納税管理人の就任)
  • 帰国時の精算・確定申告

元国税調査官の税理士が直接担当し、海外とのやり取りはオンラインで完結します。

7. よくある質問

Q当初1年未満の予定が延長になった場合はどうなりますか?

A延長により海外勤務が1年以上となることが明らかになった場合は、その明らかになった日以後、非居住者として取り扱われます。逆に、1年以上の予定が短縮された場合は、帰国により日本に住所を有することとなった日以後、居住者に戻ります。いずれも住所(生活の本拠)の実態を踏まえた判断が前提になるため、辞令の変更時点とその後の生活実態を記録しておくことが大切です。

Q家族を日本に残して単身赴任します。それでも非居住者ですか?

A1年以上の予定での海外勤務であれば、家族が日本に残っていても原則として非居住者として扱われます。ただし住所の判定は形式ではなく生活の実態による総合判断なので、微妙なケースは個別にご相談ください。

Q赴任先でも課税されます。二重課税になりませんか?

A一般の従業員の海外勤務分の給与は日本では課税されないため、二重課税は生じにくいのが基本です。ただし、役員報酬など国内源泉所得として日本で20.42%が課税され、かつ赴任国でも課税される場合、二重課税の排除は赴任国(居住地国)側の外国税額控除等で行うのが原則です(日本では非居住者の外国税額控除は原則使えません)。国によって課税関係が異なるため、個別の確認が必要です。

QストックオプションやRSUが赴任中に権利確定したらどうなりますか?

A付与から権利確定までの期間のうち国内勤務に対応する部分が日本の課税対象になり得ます。按分計算と両国の課税関係が複雑な領域なので、個別にご相談ください。

Q住民税はいつの分まで払う必要がありますか?

A住民税は前年の所得に対してその年の1月1日に住所がある人に課税されます。出国した年の翌年度分は、1月1日に日本に住所がなければ原則かかりませんが、出国年度分(前年所得分)の残額は納付が必要です。

海外赴任・出向の税務は、会社側の源泉徴収と本人側の申告が絡み合う領域です。
出国前の整理から赴任中の申告まで、オンラインで完結します。まずはお気軽にご相談ください。

プロゴ税理士事務所 税理士。元国税調査官。国税(調査・相談2万件・審判実務)×民間(事業会社実務・PdM)の経験からの複眼的な視点が強み。

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