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【事業承継の成否を分ける!】オーナー経営者のための「戦略的 株価対策」実践ガイド

2025.05.16
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長年のご尽力で大切に育て上げてこられた会社。その輝かしい未来を信頼する後継者に託し、ご自身も実り豊かなセカンドライフを迎えたい――これは多くのオーナー経営者様が抱く切なる願いではないでしょうか。しかし、その実現を阻む大きな壁が「高すぎる自社株の評価額」と、それに伴う「後継者の過大な相続税・贈与税負担」です。

事業が順調で会社の価値が高まるほど、皮肉にも株式の評価額は上昇し、後継者への承継コストは増大します。対策を講じなければ、相続税の納税資金確保のために事業用資産の売却や借入れが必要となり、最悪の場合、経営の安定性を揺るがし、会社そのものの存続すら危うくする「負の連鎖」に陥りかねません。

しかし、ご安心ください。「株価対策」は、単なる守りの一手ではなく、会社の未来を明るく照らし、後継者とご家族を守るための「攻めの戦略」です。

本記事では、事業承継における株価対策の重要性を改めてご説明するとともに、特に有効な手法として注目される「種類株式」と「従業員持株会」を活用した具体的な株価引き下げ戦略と、そのメリット、実行上の注意点について、専門家の視点から徹底的に解説いたします。愛する会社と後継者の未来のために、今こそ「株価」と真摯に向き合いましょう。

1. なぜ「株価対策」が事業承継に不可欠なのか?~放置が招く三重苦~

「株価対策」とは、後継者が株式を円滑に承継できるよう、合法的かつ計画的な手段を用いて、自社株式の評価額を引き下げる取り組みを指します。なぜ、これほどまでに株価対策が重要視されるのでしょうか?

  1. 後継者の過大な税負担の回避: 株価が高いまま相続や贈与が行われると、後継者は想像を絶するほどの相続税・贈与税に直面します。納税資金を個人の資産で賄いきれず、会社の資金を当てにしたり、最悪の場合、事業に必要な資産や自社株そのものを売却せざるを得ない状況に追い込まれ、経営基盤が大きく揺らぎます。
  2. 「争族」リスクの低減: 高額な株式は、相続人間での遺産分割協議を難航させ、時として深刻な「争族(骨肉の争い)」を引き起こす火種となります。株価を適正な水準にコントロールすることで、遺産分割をスムーズに進め、家族間の円満な関係を維持することにも繋がります。
  3. 円滑な経営権の集中: 株価対策を通じて後継者への株式集中を進めることは、経営の意思決定の迅速化と安定化に不可欠です。これにより、後継者はリーダーシップを発揮しやすくなり、会社の持続的な成長を力強く牽引できます。

株価対策を怠ることは、後継者に「過大な税負担」「争族のリスク」「経営権の不安定化」という三重苦を背負わせることになりかねません。

2. 株価対策の王道:「株式の種類や持ち主」に着目した戦略

株価対策には、大きく分けて「会社の財産評価を直接引き下げる方法(例:役員退職金の支給、不動産投資による資産組換など)」と、「株式そのものの種類や保有構造に工夫を凝らす方法」があります。本記事では、後者の、より戦略的かつ効果の高いアプローチに焦点を当てて解説します。

3. 「種類株式」の活用:魔法のような株価コントロール術

「種類株式」とは、会社法で認められている、通常の株式(普通株式)とは異なる権利内容や条件が付された特殊な株式のことです。これを戦略的に活用することで、まるで魔法のように株価をコントロールし、事業承継を有利に進めることが可能になります。事業承継で特に有効な種類株式をご紹介します。

  • 無議決権株式: 株主総会での議決権を持たない(または制限される)代わりに、配当を普通株式より多く受け取れるなどの経済的メリットが付加されることが多い株式です。
    • 承継での役割: 経営権は後継者に集中させたいが、他のご家族(相続人)にも財産として株式を遺したい場合に有効です。経営に関与しないご家族には議決権のない株式で配当メリットを、後継者には議決権のある普通株式を、といった使い分けが可能です。
  • 配当優先株式: 普通株式に比べて、優先的に配当を受け取る権利が付いた株式です。
    • 承継での役割: 安定した配当収入を重視する相続人への財産分配や、特定の株主へのインセンティブとして活用できます。
  • 取得条項付株式: あらかじめ定めた事由(例:株主の死亡、退職、一定期間の経過など)が発生した場合に、会社がその株主から株式を強制的に買い取ることができる権利が付いた株式です。
    • 承継での役割: 会社にとって好ましくない第三者へ株式が散逸するのを防いだり、少数株主からの株式集約を円滑に行ったりするのに役立ちます。後継者以外の株主が保有する株式に設定することで、将来的な経営の安定化を図れます。

【具体例】種類株式を活用した事業承継スキーム

以下は、種類株式を活用した株価対策の一例です。

  1. オーナー社長が保有する普通株式の一部または大部分を「無議決権株式(かつ配当優先株式)」に転換します。
    • 効果: オーナー社長は経営への影響力を一部手放す代わりに、安定した配当収入を確保できます。
  2. この無議決権株式を、信頼できる従業員や経営幹部、あるいは従業員持株会などに、後述する「配当還元方式」という低い評価額で譲渡(または有利発行)します。
    • 効果: 株価の高い普通株式がオーナーの手から離れることで、全体の株価評価に影響を与え、結果的に後継者が承継する普通株式の評価額を引き下げる効果が期待できます。
  3. 経営幹部などが保有する株式には、将来の買い取りを見据えて「取得条項」を付しておくことも検討します。
    • 効果: 将来、経営幹部の退職時などに会社が株式を買い取りやすくし、株式の散逸を防ぎます。

このスキームにより、後継者は比較的少ない資金負担で経営に必要な議決権(普通株式)を確保しやすくなり、かつ会社全体の株価評価も抑制されるという、一石二鳥の効果が期待できるのです。

なぜ「議決権のない株式」の評価は低くなるのか?~株式評価のカラクリ~

自社株の評価額(株価)は、実は「誰がその株式を保有しているか」によって、税法上の評価方法が大きく変わるという特徴があります。

  • オーナー社長やそのご親族が株式を保有する場合(支配株主): 会社の純資産額や類似業種の株価などを基に、会社の収益力や資産価値がダイレクトに反映された高い評価額(原則的評価方式)で計算されるのが一般的です。
  • 上記以外の第三者(例:従業員、取引先、議決権のない種類株主)が株式を保有する場合(少数株主): その株式から将来受け取れると期待される「配当金の額」を基準とした、比較的低い評価額(特例的評価方式である配当還元方式)で計算されるのが一般的です。

「議決権のない株式」は、株主総会での発言権がなく、会社の経営に直接的な影響を与えることができません。そのため、その株式を保有するメリットは、主に「配当金を受け取ること」に限定されます。結果として、その株式の価値は配当金に基づいて評価され、経営権を伴う普通株式に比べて大幅に低い評価額となるのです。

4. 「従業員持株会」の活用:株価抑制と従業員エンゲージメント向上の一石二鳥

従業員の財産形成や経営参加意識の向上を目的として設立される「従業員持株会」も、事業承継における株価対策として有効な手段となり得ます。

従業員持株会は、会社とは法律上「別人格」の独立した組織(多くは民法上の組合)です。オーナー社長が保有する自社株式の一部を持株会に譲渡すると、その譲渡された株式は「オーナー一族以外の第三者が保有する株式」と見なされます。

その結果、持株会が保有する株式の評価額は、前述の「配当還元方式」により低く評価されることになります。これにより、オーナー社長の手から高評価の株式が持株会に移転することで、会社全体の株式評価額の上昇を抑制する効果が期待できるのです。

さらに、従業員持株会には以下のような副次的メリットもあります。

  • 従業員の経営参画意識の向上、モチベーションアップ
  • 福利厚生制度の充実による従業員満足度の向上、人材確保
  • 安定株主の形成による経営の安定化

ただし、持株会の設立・運営には適切な規約作成や事務手続きが必要であり、従業員への説明責任も伴います。

5. 成功の鍵は「早期着手」と「専門家との連携」

株価対策は、その効果を最大限に引き出すためには、できる限り早期に、会社の規模がまだ小さく、株価が比較的低い段階で着手することが鉄則です。株価が高騰してからでは、打てる対策も限られ、効果も限定的になってしまいます。

事業承継について考え始めたその時が、株価対策を検討する絶好のタイミングです。

そして何よりも重要なのは、事業承継と株価対策に精通した専門家(税理士、弁護士など)に早期に相談し、自社の状況、オーナー様やご家族のご意向、後継者の状況などを総合的に踏まえた上で、オーダーメイドの戦略を立案・実行していくことです。

種類株式の発行や持株会の設立・運営には、会社法や税法に関する高度な専門知識と実務経験が不可欠です。また、評価方法の選択や具体的な手続きには、税務署との見解の相違が生じやすいポイントも多く含まれています。専門家のアドバイスなしに安易に進めてしまうと、予期せぬ税務リスクを招くことにもなりかねません。

まとめ:戦略的な株価対策は、会社と家族の未来を守る「愛」ある経営判断

大切な会社を次世代へ円滑に引き継ぎ、後継者とご家族の未来を守るために、戦略的な株価対策は避けては通れない経営判断です。それは単なる節税テクニックではなく、オーナー経営者様の会社とご家族に対する「愛」と「責任」の表れと言えるでしょう。

種類株式の活用、従業員持株会の設立など、その手法は多岐にわたりますが、どの方法が最適かは、一社一社、一人ひとり異なります。


弊所では、事業承継と株価対策に関する豊富な経験と専門知識を持つ税理士が、オーナー経営者様とそのご家族の皆様のお気持ちに寄り添いながら、現状分析から具体的な対策の立案・実行、そしてその後のフォローアップまで、一貫してサポートさせていただきます。

「うちの会社の株価は一体いくらなのだろう?」 「どんな株価対策が可能なのか、具体的な話を聞きたい」 「後継者に負担をかけずに会社を譲りたい」

初回のご相談は無料にて承っております。まずはお気軽にご相談いただき、貴社が抱える課題やご希望をお聞かせください。

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20年以上にわたり、税務のプロフェッショナルとしてキャリアを積む。 国税局に15年間勤務。税務調査官として多様な業種・規模の調査実務を担当する傍ら、税務相談室では年間2万件を超える納税相談に対応。 また、国税不服審判所における複雑な税務判断にも関与し、税法解釈と実務運用の両面に深く精通する。 その後、民間企業へ転身。大手YouTuber事務所にて、トップクリエイターの税務をサポートし、新しい経済の潮流における税務課題に取り組む。 さらに、IT企業においてはプロダクトマネージャーとして、会計税務ソフトの開発プロジェクトを牽引。テクノロジーを活用した税務の効率化と利便性向上にも貢献してきた。 これらの国税と民間の両面での豊富な経験を活かし、2024年4月税理士事務所を開設。お客様一人ひとりの状況に最適化された、先を見据えた税務サービスを提供している。

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